Moon Palace by Paul Auster

Paul Auster の Moon Palaceと言う小説を読んだ。
ペーパーバックで訳300ページ程だが、とても読みやすくて3日かからずに読めた。
どんどん物語に引き込んでゆく面白さと物語の中に物語が幾つも入っていて、それぞれがどんどんオーバーラップしていくのもよかった。
テーマも”人生は孤独であるという事がわかって初めて他者と繋がれる”というのはとても共感できる。

主人公が盲目の老人の車いすを押しながらNYの町中を散歩する時に老人に見るものすべてを言葉にして説明する。
P.122 a process of training myself how to look at the world as if I were discovering if for the first time. What do you see? And if you see, how do you put it into the words? THe world enters us through our eyes, but we cannot make sense of it until descends into our mouth.
僕が写真を撮る時にも、この初めてそれを見ているような眼を持つ事に気をつけている。
そして自分は何を見ているのか(見ていたのか)を暗室でプリントする時に改めて考える。

p.122 they are deeply familiar to me, and I felt I knew them by heart. but that did not take into account the mutability of those things, the way hey changed according to the force and angle of the light, the way their aspect could be altered by what was happening around them.
もう見て知っているようなものでも、光の加減や角度、またその周りで起きている出来事などによってものは違って見える。

p.122 take nothing for granted
何事も確かだと思い込むな。

p.123 I was piling too many words on top of each other, and rather than reveal the thing before us, they were in fact obscuring it, burying it under an avalanche of subtleties and geometric abstractions. The important thing to remember was that Effing was blind. My job was not to exhaust himself. In the end, the words didn't Their task was to enable him to apprehend the objects as quickly as possible.
沢山の言葉を無駄に浪費する事では世界を明らかにするどころか、曇らせて見えにくくしてしまう。
大事な事はオーディエンスを沢山の単語で疲弊させることじゃなく、その人が感じて理解できる様にすること。
simplify my sentences, to learn how to separate the extraneous from the essentials.
文章をシンプルにして本質に関わりのない事を重要な事からわけること。
これはまさに僕が写真でやろうとしている事。
混沌とした世界から本質に重要なことを分けるのに写真のフレームで流れていく時間の一瞬を切り取る。これは空間的にも時間的にも世界を簡素化する事。
でも、それで気をつけなければいけないのは、そこで無駄なものだけをそぎ落として大事なものだけを残す事。

p. 170 The true purpose of art was not to create beautiful objects, ~. It was a method of understanding, a way of penetrating the world and finding one's place in it, and whatever aesthetic qualities an individual canvas might have were almost an incidental by-product of the effort to engage oneself in this struggle.
芸術の目的は美しいものを作るという事ではない。それは理解する為の方法で、世界を見通して理解する為の、そしてそこに自分の居場所を見つける事。
その作品に出現する美しさはその自分を作品の中に結びつけようとする努力の過程で生じる殆ど付随的な副産物である。

これは特に写真を始めた理由でもある。
政治学や哲学を写真を始める前にしていたのも世界を理解したいからだった。写真に移ったのも方向転換したと言うよりも、むしろ写真の方が僕にとって世界を理解する方法として適していると直感的に感じたからだ。
そして美術を学ぶ様になって美しさアートにとっては一つのエレメントでしかないという事を学んだ。
日本語ではart=美術となるが実はartにとって美とは沢山ある問題の一つでしかない。
(余計ごとだけど、たしか岡本太郎氏が著書の今日の芸術の中でartは芸事とは一線を画すものだとも言っていたと思う。)

とにかくPaul Austerとはとてもアーティストとして共感できるところが多く、彼の他の作品も読んでみたいと思い、ニューヨーク三部作を探しに昨日は古本屋を巡ってみたのだけれど、どこにも見つけられず、結局Kurt Vonnegutの"Slaughterhouse-Five"を$3で買った。
それとPaul Austerは自分の著書の映画化をあのWim Wendersに希望していたらしいが、都合が付かず結局自分で映画化したらしいというのでその映画『SMOKE』も観た。しかし、期待しすぎていたのか、これと言ってあまり感想がない。観た人で、この映画はこれがいいというのがある人は是非教えて下さい。

Moon Palace (Contemporary American Fiction)

Moon Palace (Contemporary American Fiction)

それとPaul Austerは自分の著書の映画化をあのWim Wendersに希望していたらしいが、都合が付かず結局自分で映画化したらしいというのでその映画『SMOKE』も観た。しかし、期待しすぎていたのか、これと言ってあまり感想がない。観た人で、この映画はこれがいいというのがある人は是非教えて下さい。
彼の作品の映画化はあと"Lulu on the Bridge"と”Blue in the face”というのがあるらしいが、後者はlou reedとjim jarmuschが出演しているので観てみようかな。