ガープの世界 The World According to Garp by John Irving

以前から気になっていたJohn Irvingの小説を初めて読んだ。
貸してくれたリリさんありがとう。
小説家、ガープの一生をまるまる追ったとても読み応えのある作品だった。
それにプロローグ、エピローグもとっても素晴らしくて、一冊で何冊も読んだような濃い小説だった。

以前どこかで村上春樹さんは、カラマーゾフの兄弟のように様々な視点と世界観を小説の中におく事で総合的な世界観を持つ小説(総合小説)を目指したいというような事をおっしゃっていた気がするが、ガープの世界カラマーゾフの兄弟まで複雑ではないにしろ、登場人物の多様な世界観、そこにまたガープの書いた小説を入れ子式に挿入する事によってとても面白い世界ができていると思った。

きっとこの本は色々な読み方ができるのであろうけども、今回僕は芸術家としてのガープ(それはIrving自身と重なる)の哲学にとても共感した。例えば、芸術のテーマ自体にそう多くの種類はないが、それを芸術にするのは洗練された芸術家の視点だというような部分があった。
これはもちろん当たり前の事なのだけれども、それをはっきりと自覚する事は大切だと思う。
それは最近、いろいろな芸術作品を目にする事になって、色々な事が洪水の様に起こって混乱してしまう事がある。そのことをはっきりと自覚する事でその混乱は少し整理されるだろうし、また、自分の作品制作においてもより鮮明に自分のするべき事が見えてくる気がする。

とても面白かったので、Irvingの処女作『熊を放つ』と有名な『ホテル ニューハンプシャー』も読んでみたい。
ところで、この『ガープの世界』はあのロビンウィリアムス主演で80年代に映画化されているらしい。誰か観た人いたら感想を教えて下さい。

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈上〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈下〉 (新潮文庫)

ガープの世界〈下〉 (新潮文庫)