The Diving Bell and the Butterfly / 潜水服は蝶の夢を見る

The Diving Bell and the Butterflyという映画を観た。

フランスElleの編集著だった男が突然昏睡状態になってしまい、三週間後に目が覚めると左目意外は麻痺してしまった状態に陥りながらも、周囲の人の協力で一冊の本を書き上げる。この本が原作となってアーティストのJulian Schnabelがとった映画。

まずタイトルからとてもひかれたし、音楽もかなり良かった。
記憶と想像力から生まれた詩的効果はとても美しいと思った。
リッチで華やかな自分から一変して、不自由な体になってしまい、自己憐憫に浸る主人公は周囲の人間に助けてもらうだけでなく、みんなを巻き込んでコミュニケーションの輪を作るところが良かった。


ただ、冒頭のシーンで主人公の一人称視点からの映像がしばらく続くのだが、この視界がぼけて定まらない効果を出そうとしてレンズ商店をぼかしたりしているのがちょっと違うというか、もっといい表現方法は無いものかと思ってしまった。やっぱり人間の眼に見える様に映像を撮るというのは難しいみたいだ。この人間の視覚、見え方というのは写真作品を製作する上でよくテーマに考えている事なのでここをもっと掘り下げて考えたい。ただ、中盤から後半にかけてのこういった視覚効果は眼の見え方の単純な模倣ではなく、視覚言語としての役割を果たしていてとても良かった。

それから記憶と想像力によって詩的な世界を作り出すという点でも素晴らしかった。いつも考える事だが所謂客観的な事実として、想像力や過去の記憶を排した映像は、映像としてコピーになった時点で現実から劣化しているのだから主観的であるにしても、想像力や記憶など他のもので補ったり、またはそういったもので、他の次元に昇華してしまわなければいけないと思う。

それにしても、このタイトルは本当に素敵だと思う。